定期便がなぜ安いのかをお教えしましょう
玄関に積み上がる段ボールタワー
人と違う視点に憧れがある。
わたしは、ぼんやりしていて鋭い観察眼がない。
ついでに言えば、事務能力もない。
むしろ、こっちの方が問題かもしれない。
ふと、メールを見る。
「配達が完了しました」
まずいっ!
玄関に走る。
あぁ……やはり……。
何ということでしょう。
そこには、大量の麦茶と水と緑茶が置かれていた。
水と、子ども用の麦茶と、緑茶。
わが家では、これらを定期便で買い置きしている。
人間の体のほとんどは水だし、子どもの体のほとんどは麦茶みたいなものだ。
だから、定期便自体は便利なのだ。
ただ、足りなくなるタイミングで別に注文したり、セールで安くなっているからと、いつもより多めに注文したりすることがある。
すると当然、余る。
そういう時は、定期便をキャンセルしなければならない。
しなければならないのだ。
それなのに、わたしは毎回きれいさっぱり忘れる。
カーテンを開けて、多肉植物を外に出して、スープにお豆腐を入れて、
「いい朝だな」
などと丁寧な生活ぶっている。
おろかもの。
まず先に定期便をキャンセルしろっ。
玄関に積まれた飲料たちは、もはや備蓄という名の規模を超えている。
我が家の玄関は、小さな物流倉庫へと変貌を遂げていた。
そもそも、定期便は親切だ。
注文確認もしてくれる。
発送前の予告メールも送ってくれる。
その間、キャンセルできる時間はいくらでもある。
のに。
わたしは動かない。
わたしは、足元が火で焦げるくらいではまったく動かない人間だ。
その状態でも、火に炙られながら床にごろごろ寝転び、『ちびまる子ちゃん』を読んでいられる。
そして、火が全身を包んだ頃になって、ようやく気づく。
おや?
なにやら暑くないか?
遅すぎる。
定期便とは、一度頼んでおいて、不要な時はキャンセルすることもできる仕組みである。
つまり、こう思う方もいるかもしれない。
「それなら、ただ値段を安くしているだけで、店側には何のメリットもないのではないか?」
計画的かつ鋭い皆様。
恐ろしいことに、これが答えです。
きっとわたしのような人間がいるから、定期便は安くなる。
定期便の安さは、わたしの事務能力の低さによって支えられている。
世の中には、発送予定メールが来た瞬間に内容を確認し、不要なものをキャンセルし、必要なものだけを残せる人がいるのだろう。
そういう人は、きっと冷蔵庫の中身も把握している。
賞味期限の近い豆腐を見落とさない。
メールの返事も早い。
靴下も片方だけ消えたりしない。
同じ人類とは思えない。
わたしは違う。
メールは見る。
見ることは見る。
しかし、見たあとに「あとでやろう」と思う。
この「あとで」がいけない。
わたしの中の「あとで」は、時間の概念ではない。
異世界である。
一度、『あとで世界』に送られた用事は、ブラックホールに吸い込まれたかのように戻ってこない。
たまに戻ってくる時は、時空と世界の歪みの奔流に翻弄されて、たいてい手遅れの姿になっている。
しかも、この文章を書いている今、わたしはまだ来月分をキャンセルしていない。
メールの返事をすぐしないと気持ち悪い人には、想像もつかないだろう。
わたしは、キャンセルしないまま、今からお風呂にバスソルトを放り込んで、ゆったり浸かることすらできるのだ。
鼻歌どころか、大きな声で歌って見せよう。
わはは。
参ったか。
いや、参っているのはこちらである。
人と違う視点を欲しがる前に、事務能力を欲しがれよ。
さすがにキャンセルしておくか。
そう思った、その時だった。
iPhoneの通知音が鳴った。
恐る恐る画面を見る。
まずいっ!
先月注文した、いちご味のプロテインが……!




とても面白かったです😂
私はすぐ対応しないとソワソワして落ち着けないタイプなので、
だからこそゆずるぎさんの世界観が面白かったです😂ゆったりできる器というか精神力かっこいいです😂✨️
某バスケ漫画の「まだ慌てるような時間じゃない」がよぎりました🤣
天才すぎる😂
焼かれながらちびまる子ちゃん読んでるゆずるぎさんを想像して笑ってすみません!!😂